Ferrari F430 |
無骨さを感じさせる理由は幾つかあって、それは私が思うに、
- 重いセッティングのパワーステアリング
- シンプルな内装
- 重いブレーキ/アクセルペダル
- 荒々しいエンジン音
- 路面の凹凸がダイレクトに伝わり突き上げがすごい
- F1マチック(一昔前のトランスミッション)のダイレクトで「ガックン」と入るシフトチェンジ
といったところではないかと思う。
その、言って見れば「ラグジュアリーの欠如」が、よりスポーティさを演出している。なのでよりスポーティな車に乗りたいなら、458イタリアよりも安価なF430という選択肢もありだ。
フェラーリ・F430(クーペ)のスペック
メーカー:フェラーリ
モデル:F430
製造国:イタリア
販売開始年:2004年
エンジン:4.3L V8
出力:497PS
トランスミッション:F1マチック(MTもある)
駆動方式:MR
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インプレッション(感想)
何と言っても最初に感じるのが圧倒的な乗り込みにくさ。車高が低いし、デカいドアを開けるとかなり前の方にシートがある。駐車場で隣に車があったら隣の車にドアを当てずに乗車するのはかなり至難の技。
まず「かっこいいF430への乗りこみ方」をマスターしないと、乗りこみにジタバタしてカッコ悪い姿をさらしてしまう。車はカッコいいのに。
そしてタイトにホールドするシートに乗り込んで、かなり後方のBピラーに着いたシートベルトを引っ張ってこようとすると、シートベルトになかなか手が届かずこれまた大変。
シートは非常にタイトなので、ガソリンスタンドなどでお尻のポケットから財布を出そうとするだけで結構大変だ。
それからスピードメーターが360キロ(!)まであるので、普通に運転するにはメーターの3分の1以下しか使わない。
そしてメーターに表示されるナンバーは30キロごと(30、60、90、120・・・)で、なおかつメモリが6つに区切られているので、実際何キロで走っているのかが非常に分かりづらい。
例えば70キロで走ろうとすると、え〜、どこのメモリだったっけ???となってしまう。(正解は「60」の文字から2つ目のメモリです。)
こんな感じで細かい部分だけ取ってみても、普段乗りの利便性は全く考えられていないのがこの車。(もちろん後部座席が無い、トランク容量は小さい、のは当たり前)
たがしかし、走り始めると・・・
速えぇぇ・・・・!!!
とにかく楽しい!アドレナリン大放出の車です。
爆音を轟かせる頭の後ろに位置するエンジンでグイグイ押される感覚が怖くて楽しい。
そしてドバイではフェラーリを運転していると実は安全。なぜなら周りの車が率先して避けてくれるから。(でも多分日本でもそうだよね。フェラーリなんか運転している「普通じゃない人」とトラブル起こしなくないですよね。)
運転した感じは、車を運転しているというよりは、どちらかと言えば航空機を運転しているような気分にさせられます。いや、飛行機を運転したことはないんですが。
車体のどこかしこからミシミシ音、ガタピシ音が聞こえて来る。そうジャンボジェットに乗っている時にミシミシするアレと同じ音。
そして飛行してるかのように加速は凄い!乱暴かつ無尽蔵に加速します。
いっぽう商品としての、機械としての完成度は?
というと細かい部分が2000万円の車としては・・・
という感じ。
皮内装はもちろん上品ではあるのだが・・・
メルセデス(ベンツ)やBMWの500万円だって同等かそれ以上の上品さだし。
ステアリングの重さとか、ブレーキペダルの「ブニャン」という感触とか、今ひとつラグジュアリー感と繊細さに欠けるんだな。ダイヤル式のエアコンの操作もやたらとアナログ的だし。
それからエンジンの馬力はすごくて、サイドブレーキの効きが弱いので、サイドブレーキを解除し忘れて走っても普通に走れちゃいます・・・
こんなサイドブレーキでは坂道で駐車するのは心配。
まあ「フェラーリだから、イタリア製だからしょうがないか」と思わせてしまうところはご愛嬌。2000万円以上の車なんですが。
それから運転しやすさ、という観点は皆無。
アクセルペダルの位置がやたらと遠いし、ウィンカーレバーは結構ごついパドルシフトの奥にあって、大きな手でなければハンドルを握りながら操作ができない。
細かい不満を言ったらキリがないが・・・
結局のところそこを期待する車ではない、ということなのだろう。
458イタリアが誰でも運転できるラグジュアリー・スポーツカーなのに対し、F430は悪く言えば古臭い感じのスポーツカーだ。
良く言えば、無骨なだけに運転する楽しさを最大限に味わえる車とも言える。458イタリアに比べると頑張って運転する必要がある車、それがF430。
DCTほどスムーズに変速しないF1マチックは、ガックンという衝撃と共に「ギア入りました!!」というダイレクトな感触が楽しめるし、ハンドル(ステアリング)や各ペダルの重さも、自分でマシンを操作する感触が楽しめます。
よって458イタリアよりも運転するのは疲れます。
458イタリアは遠出もできるかな、と思わせる車だが、F430ではとても遠出する気にはならない。一家に一台だけ持つには全く向かない車です。
そして気になるATモード。
458イタリアと同じくATモードとマニュアルモードの切り替えはセンターコンソールの"AUTO"ボタンを押すことで切り替えます。
1昔前のシステムにもかかわらず、なぜか不思議と458イタリアのDCTのATモードほど違和感を感じさせないのがこのF430のF1マチックだ。
違和感とは言っても、ギアチェンジのスムーズさの話ではなくてセッティングの話。当然DCTの方が完成度は高い。
458イタリアのDCTはといえば2000回転を超えたところですぐにシフトアップしてしまうため、ギアチェンジのタイミングは物足りないし、エンジン回転に伴う爆音を響かせることもなくエコモードみたいな「非常につまらない走り」になってしまう。
いっぽうF430は3000回転後半でやや遅れ気味にシフトアップするため、制限速度60~70キロ程度の街中で走っている分にはギアチェンジのタイミングはそれほど気にならない。
ただし時速120km以上まで一気に加速できるような状況の場合は、やっぱりシフトアップが早すぎて物足りなさを感じてしまう。しかもF1マチックは結構「ガックン」と衝撃があるので、自分が予期しない時にガクンとくると結構不快。
やはりフェラーリはATモードが付いていてもパドルシフトを使って自分でギアチェンジした方が良いようだ。
動画:フェラーリ F430 スタートアップ/エンジン音/試乗
勝手なまとめ
- 機械として完成度が高くないところが逆に運転する楽しさを感じさせる。
- 運転には結構体力が必要
- 見た目の美しさはさすがのフェラーリ
- 日常で使用する車ではない(通勤用の車にはまったく向かない)
- 運転しやすさ、ということはあまり考えられていない
- 街中で走るならATモードは意外に使える
- だがそもそも低速走行中心で信号が多い日本の街中には向かない車だと思う。(日本全国で、この有り余る加速を体験できる道路はあるのだろうか?)
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